“パキスタン”地震?
今月の7日にあちらで起きた地震・・・。

これについて言及する際、自分が新聞やNHKなどで目にする限りでは、「パキスタン(大)地震」が近頃一番多く使われる名称となってきたような気がする。

「パキスタン北部(大)地震」や「インド・パキスタン(大)地震」というのも見かけるが、やはり記事の見出しなんかで使われるのは短く「パキスタン地震」。

他にも震源地から名づけたと思われる「カシミール地震」(個人的には「カシュミール」としたい)というのもある。
あと海外の報道メディアや国際機関(とりあえず確認した限りではBBCCNNとかUNICEFなど)の、特に英語による記述では「South Asia Earthquake」が使われる場合が多いのか、それらから翻訳・引用された記事では「南アジア地震」というのも見かける。

こんな一大事だっちゅうのにたかが地震の名前ごときで何を暇な事のたまっとるんじゃーッッッ、と思えばそれまでの話なんだが、ハイ。
・・・だけどそれが何となく気になる~っていう話、今回は。


とりあえず整理してみると・・・
 ①「パキスタン地震」:震源もあり、一番被害が大きく報告されている国として。
 ②「カシミール地震」:震源地であり、実行支配線で分断された双方に被害地があるため。
 ③「南アジア地震」:規模が大きく被害地域がアフガーニスターンやインド(カシュミール以外にもパンジャーブなど)にも渡るため。(考えとしては「インド・パキスタン地震」も同様。だけど後で検索かける際に①とごっちゃになる都合で割愛。)

・・・・というふうに分類してみた。

次にこの三種類の名称がそれぞれどれだけ多く使用されてるのかを調べるため、Google検索にかけてヒットする件数(10月25日現在)を基準に見てみると・・・
 ①約 1,610,000 件
 ②約 144 件
 ③約 762 件 (例外的に「南アジア大地震」の方が多くヒット;約 1,340 件

やっぱり自分が感じたとおり、①「パキスタン地震」がダントツ多いのかな~。

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・・・とそんな事してる最中に、ウィキペディアの記事ではタイトルに「パキスタン地震」を採用している(記事中に補足で「カシミール地震」と記載。)のを発見。

その横にあるリンクから他の言語のウィキペディア内の同じトピックの記事に行けるので、そこでの記事タイトルに採用されている各言語での名称(記事中に補足で記載されている別の名称はとりあえず割愛)も分類してみると・・・
※これらの名称がそれぞれの言語の使用地域のマスメディアで、どれだけの割合で用いられているか不明だが、ウィキペディアの記事タイトルに採用されているという事である程度の目安にはなると思う。

 ①日本語:「パキスタン地震」
  トルコ語:「8 Ekim 2005 Pakistan Depremi
  中国語:簡体字表記「2005年克什米尔大地震」
       繁体字表記「2005年克什米爾大地震」

 ②ドイツ語:「Erdbeben in Kaschmir 2005」
  英語:「2005 Kashmir earthquake」
  スペイン語:「Terremoto de Cachemira de 2005」
  ヘブライ語:「רעידת האדמה בקשמיר 2005」
  オランダ語:「Aardbeving Kasjmir 2005」
  ポーランド語:「Trzęsienie ziemi w Kaszmirze 8 października 2005」
  セルビア語:「Потрес у Кашмиру 2005」
  ウクライナ語:「Землетрус в Кашмірі (2005)」

 ③フィンランド語:「Etelä-Aasian vuoden 2005 maanjäristys」
  インドネシア語:「Gempa bumi Asia Selatan 2005」
  韓国語:「2005년 남아시아 지진」

 ○それ以外
  フランス語:「Tremblement de terre du 8 octobre 2005」
  イタリア語:「Terremoto nel subcontinente indiano dell'8 ottobre 2005」


おまけで韓国語、中国語(簡体字・繁体字それぞれ)でGoogle検索のヒット数(10月25日現在)も見てみた・・・。
※同じ2バイト文字(ローマ字やアラビア文字は1バイト)を使用するので、検索結果から対象外のヒット(単語を分かち書きする場合に「○○○」と「地震」が同一ページで別々になってる場合)を比較的排除できるかなぁ、と思ってたけど↓下の※に書いたとおり結果そうでも無かった。
あんまり意味ない気もしてきたけど、既に検索してしまったのでとりあえず掲載・・・。

☆韓国語
 ①약 21,400개
 ②약 160,000개
 ③약 26,300개
※韓国語のハングル表記の慣例なのか、「○○○」と「地震」を分けたほうが多くヒットする場合もあり、実際に確認しても分かち書きしてる事がほとんどのようなので、三つとも間にスペース入れて検索した。一つの名称としてでは無く、同じページの別々の箇所にある場合もヒットしてしまう事はしょうがないとして。
(日本語での検索のシステムと違うのか、分けても分けなくても同じ事が起きるようだ。)

☆中国語(簡体字 / 繁体字)
 ①约有1,170,000项 / 約有1,190,000項
 ②约有192,000项 / 約有237,000項
(繁体字では別表記??の「喀什米爾地震」も含まれる。)
 ③约有1,450,000项 / 約有1,460,000項
※中国語の検索では、間にスペース入れずに検索した。その方が一つの名称として多くヒットはするけど、それでも同一ページ上で別の箇所にある場合も含まれてしまう。
(検索のシステムが日本語の場合とやはり少し違うのだろうか??)

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・・・な~んて、しょうもない検索ケンサクなぞしてたら途中無駄に長くなってしまったけど、そろそろ本題に。

学術的な目的では震源のあった地域の名称を基準にする方が都合がいいのだろうけど、被害地域の全体を的確に反映させる必要があるならば、「○○○地震」の「○○○」部分の名称にはいろいろ気を回さなきゃならないと思う。今回のように被害を受けた地域が国境(カシュミールの場合は実効支配線)を越えて広がっている場合なんかは特に、である。
※昨年12月の大地震も同様に、震源からいけば「スマトラ島沖地震」だけど、被害地域が広範に渡る事から「インド洋地震」、もしくは被害の直接原因も明確にするため「インド洋津波地震」というように、いくつか名称が分かれている。

もしもある名称が指す地理概念が国境を越えて適用されないとしたら、被害地域の一部をすっぽり排除してしまう可能性もありうる。(それがそのまま人々の関心からすっぽり脱落、という事に即つながるわけでもないだろうけど。)


また今回みたいに歴史に残りそうな大地震が起きた場合、その名称(日本語で「○○○地震」と言う場合の、○○○部分)が定まってくるのはある程度時間が経過してからになるだろう。マスメディアの発達によって情報がかつて無い規模で広まり、共有されるようになった現代では、名称が確立されるまでのこの過程において、TVニュースや新聞で採用される名称(特に記事見出しなどで繰り返し多用される簡略化された通称)がけっこ~重要だと思う。

報道において用いられる名称が、その情報を受け取る人々にとってはその地震に関する一連の出来事を印象付け、漠然としたイメージを思い起こさせる記号としての役割を果たすからである。(もちろんこれは「○○○地震」の名称で言及される場合に限らず、「被災地の△△△」とか「被害が最も大きい□□□」というふうに繰り返し出てくる場合にも同じだろう。)

(話が横道にそれるが、いつから「ムザファラバード」がこんなに多くなってしまった~?春先にバス路線開通の時は少なくとも「ムザッファラバード」ってのが多かったような気がするけど・・・??まぁ個人的には“ムザッファラーバード”(मुज़फ़्फ़राबाद مظفر آباد)と表記したい。)

このようにあちこちで言及される「○○○地震」の「○○○」の中身で何が変わってくるのかと言うと、その名称によって喚起される人々の注目の度合いに地域差が出てくる、さらには具体的に援助や寄付金の集まり具合という形で反映される、なんて事が多少なりとも起きるんではないかと思う。(見出しではともかく、記事本文で被害地域の広がりについて説明が補足されるから大した程度でもないかもしれんけど。)

交通網の被害による遠隔地へのアクセス事情悪化とか、物資受け入れ側の対応が追いつかなかったりとか、支援団体の連携不足だったりとか、災害の現場で起こりうる援助の地域差についてはとりあえず別の話として。
(もちろん国の枠組みを越えて活動する国際機関やNGO組織などによって、それぞれの元に各自で援助物資や寄付金を集めて一元化し、そこから被災地の現場にバランスを考慮して分配するべく努力がなされ、またそれが実際に行われてもいるのだろうけど。)


・・・で、ここで結論として何が主張したいのか?

・・・と言われても、実は特に何も無いのである・・・。うへ。

とりあえず①「パキスタン地震」とした場合に、インド側の被害地域ジャンムー・カシュミール州のことは言うまでもなく、アーザード・ジャンムー・カシュミール आज़ाद जम्मू कश्मीर آزاد جموں و کشمیر (略称?略号?“AJK”)が名目上は一応独立した*「国家」である事なんかはどうするの~???というツッコミは置いといて、まぁ他の2つにも範囲設定が②狭すぎだったり、③広すぎだったりな感じもするので、いずれの名称にせよ一長一短があると思う。

特にカシュミールはその実質上の国境からして、“あくまで一時的な停戦ライン(Line of Control/略称“LoC”:管理ライン)である”な~んて少し長々と説明付けないといけない気分にさせられるような、ややこしい土地なので①や②の名称にまつわる政治性もややこしい。そこらへんのややこしさは、外務省HP:「パキスタン等における地震」(別の箇所では「パキスタン等大地震」も)における“等”の一文字あたりによく表れていると思う。

*ちなみに恥ずかしながら、最近までこの事に関して自分も無知蒙昧な輩の1人でした~。
 参照→Koidelahore氏の『Lahore Diary』
AJKは実質的にパキスタン一部だが、形式上は別個の「国家」ということになっている。独自の大統領、政府、制憲議会まである。
  (10月10日分記事“パキスタン北部地震 甚大な被害”より引用)


それに今ところとりあえず自分には他にもっと妥当な名称は思いつかないしな~、何かあるのかも知れないけど・・・。

(・・・・とまぁ、こんな感じで「パキスタン地震」という名称についてあれこれと気にはなるんだけど・・・、長々と書いた割には煮え切らない最後ですいませぬ~。)

※10月28日追記:下のコメント欄↓に書いた理由から、“Line of Control”の訳語を変更しました。(「実効支配線」→「管理ライン」)
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by ek-japani | 2005-10-25 15:55 | 考察


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